【未完成工事支出金の算出方法】

当方では財務会計サポート業務も請け負っております!

〈こちらのコーナーでは、建設業会計において特有の勘定科目である「未成工事支出金」についてご説明いたしております。ご参考にされてくださいませ。〉

★「未成工事支出金」につきましては、建設業会計においては必須の内容であるにもかかわらず、その業務にかかわられている方々にとって分かりづらいものとなっております。

そこで、こちらのコーナーにおいて、ことに未成工事支出金の算出方法にもスポットをあててその算出例も示しております。ご参考にされてみてください。★

 

[前提となる基礎知識ー「収益費用対応の原則」ー]

このお話に入る前に、分かりやすくする為に、前提となる考え方(企業会計原則からとってきております。)をご紹介いたしておきます。
まず、「収益費用対応の原則」(「費用収益対応の原則」と呼ぶこともあります。)という大変重要な会計原則の考え方について、説明いたします。(本日はこれがテーマです。)
この原則は、「一つの会計期間」における「収益」と「費用」の「計上根拠」となっております。
この考え方は、文字どおり、「財務諸表」において「一会計期間」における「収益」と「費用」とを 「対応表示」させる、ものであります。(←【対応】が重要なのです。)
が、現実問題となるのは、「決算期末日現在」での、これらの「収益」および「費用」の「処理関係」であります。
決算期末日現在」において、“”収益を計上するのであればこれに対応する費用を計上し!”、逆に“収益を計上しないのであれば費用も計上しない!”、ことを意味しているのです。
(今回のテーマでは、うしろの赤い色のほうの“しない!”の方が重要とテーマなります。)
つまり、「収益」と「これに対応する費用」は「ワンセット!」としてとらえるのです。

収益費用対応の原則】(一般企業でのイメージ図)ー
各会計期間(事業年度)〕

 前  期 

  当                   期  
 翌  期 

収益の計上)

 前期対応↑               当期対応↑                                       翌期対応↑

 前期の収益  

  

  当  期  の  収  益      


 翌期の収益  

(費用の計上) ↑             ↑              ↑              ↑     ↓↑

              対応関係対応関係対応関係↑対応関係

    
当期の費用


当期の費用
当期の費用

当期の

費用       

                               翌期対応↑

                                
翌期の費用 

 

※一会計期間における収益とこれに対応する費用とは対応表示させる必要がございます。

[建設業での収益費用対応の原則]

では、次に『建設業の場合』での『収益費用対応の原則』を考察してみましょう。

 

建設業における収益

まずは、『収益』の方から考えることとします。
じつは、『収益』については、建設業の会計処理方法には、『工事完成基準』という処理方法と『工事進行基準』という処理方法の2つかございます。
比較的大規模で長期にわたる工事を行う建設業者(ゼネコンなど)の場合は、工事の進行程度に応じて『収益』を計上する『工事進行基準』が採用されます。(今回は、この説明は省略させていただきます。)
これに対して工事の下請け業者や中下請け業者などの中小企業の建設業者の場合は、ほとんど前者の『工事完成基準』を用いることとなります。(ここでは『工事完成基準』を前提にご説明いたしております。)
この『工事完成基準』は、工事が完成し引き渡しした時点で『収益』を計上いたします。
こちらの場合、決算期末の時点において未完成となって次期に繰り越しする工事については、当会計期間の『収益』には計上しません。

収益費用対応の原則】(建設業におけるイメージ図)
各会計期間(事業年度)〕

 前  期 

  当                   期  
 翌  期 

工事完成状況

 前期対応↑  当期対応↑

前期完成

工事A   

前期未完成当

期完成工事B

        当期対応↑当期対応↑当期対応↑当期対応↑

              

当期完成

工事C 

当期完成

工事D 

当期完成

工事E 

当期完成

工事F

(工事B・工事C・工事D・工事E・工事Fは、当期の収益に計上します。)                               翌期対応↑

                              

当期未完成の

工事G  

 (工事Gは、当期の収益には計上しません。)

※当期に未完成で翌期に繰り越した工事(翌期に完成)は、当期の収益には計上し

ません。翌期に完成したのであれば翌期の収益に計上いたします。


<参考未完成工事の取扱い>
建設業においては、さまざまな工事を受注することとなるのですが、決算期末の時点において着手した工事が未完成でおわるケースもでてまいります。
建設業会計では、この期末時点での未完成工事のことを『未成工事』と呼びます。この
未成工事に係る工事代金の着手金(いわば『前受金』)のことを『未成工事受入金』と呼びます。
→こちら受入金額の会計処理は、単に【貸借対照表】の【負債の部】に『未成工事受入金』として計上すればOKです。


《建設業における費用》
さて、次に『費用』についてみてみましょう。

はたして『収益』に対応する『費用』の方は、どう処理すればよいでしょう?
建設業会計においても、やはり“「収益」と「これに対応する費用」は「ワンセット!」”としてとらえます。
したがって、未完成工事に対応する諸費用当会計期間の『費用』からはのぞくこととなるわけであります。
問題は、この未完成工事に係る材料代や外注費などの諸経費の処理をどうするのか?、となります。

収益費用対応の原則】(建設業でのイメージ図)ー
各会計期間(事業年度)〕

 前  期 

  当                   期  
 翌  期 

収益の計上)

 前期対応↑               当期対応↑                                       翌期対応↑

 前期完成=

前期の収益 に

計上 

  

  当期完成 =当期の収益に計上     


 当期未完成(翌期完成)

翌期の収益に計上 

(費用の計上) ↑             ↑              ↑            ↑     ↓↑

                     対応関係対応関係対応関係↑対応関係

    
当期の費用


当期の費用
当期の費用

当期の

費用     

                               翌期対応↑

                               

翌期の費用=

当期の未成工事支出金

として計上 

 

※一会計期間における収益とこれに対応する費用とは対応表示させる必要がありまます。

これは建設業においても同様です。

当期末に未完成となった工事(=「未成工事」)の請負対価については、当期の収益には計上いたしません。

これに対応する費用も、やはり同様に当期の費用には計上しません。

この場合、未完成工事に係る工事原については、その各要素を集計し「未成工事支出金」として、貸借対照表に計上して翌期に繰り越しする処理をいたします。


〔未成工事支出金の集計〕
問題は、この未完成工事に係る材料代や外注費などの諸経費の処理をどうすか?、なのです。

〈工事直接費と工事間接費〉
建設業には特有の原価要素が混在いたします。

すなわち、当該『未完成工事』にかかる諸経費として明確に区分できる部分(=『工事直接費』とよびます。)と、明確には区分できない部分(=『工事間接費』)とが、混在している点がございます。
〈工事直接費〉

明確に区分できる部分(=『工事直接費』)は、問題なくスムーズに処理できます。

未完成工事に係る『工事直接費』を、『未成工事支出金』に集計すればOKです。 一般的には、材料費や外注費などが、この明確に区分できるものの代表例に該当してくると思われます。
〈工事間接費〉

一方、どの工事に対応する原価なのかが明確には把握しにくい工事原価がございます。

これが工事間接費と呼ばれるものでございます。

すべての工事にわたって均等に業務をおこなう工事社員などの人件費や工事車両のガソリン代などは、明確には区分しにくいものの代表例といえます。
建設機械のリース料なども、当該の機械を数種類の工事に連続的に利用するケースなどの場合は、同様となってまいります。
これらの、完成工事に係るものと未完成工事にかかるものとに明確に区分することが困難な経費は、どう処理すればよいのでしょうか
案外、建設業会計に長年携わってこれらた方や税理士事務所の職員でも、この処理となると結構あいまいな答えとなる方々も多いらっしゃるのが実態のようです。
じつは、この処理については、合理的な処理方法があるのです。

〈合理的基準による按分〉

抽象的には“合理的基準にて按分せよ!”と各手引き書において記載がなされているかと存じます。

結論的には、工事直接費の按分費のたすけを借りて工事間接費の按分計算を行うこととなります。

つまり、当期に行った全工事にかかる原価のうち未完成工事に対応する工事原価の比率を工事直接費で算出しておき、この比率をもって工事間接費を按分計算するわけです。

代表例として、工事直接費における外注費の費を用いて工事間接費の按分計算を行う例がございます。

また、材料費の費を用いる例も、これと並んで利用しやすい按分計算方法となっています。

あるいは、外注費の費と材料費の費の2つの費の平均値を用いる方法もございます。

未完成工事支出金の算出例ーガラス工事業を想定したケースー
Ⅰ未成比の算出

工事名



O工事
V工事
X工事
Y工事
(小計)

Z工事

(合計)
完成or未完成
 
完成
完成
完成
完成
全完成工事

未完成

全工事


工事直接費 

 O工事

 V工事  X工事 Y工事 (小計)

Z工事
(合計)
   材料費

   500 
   350
 450
  550
     1,150

    260

  1,410
   外注費

   350
   200
 350
  400
     1,300

    140

  1,440
  (小計)

   850
   550
  800
  950
     3,150

    400

   3,550

 (未成比)                           = (11.3%)

 

工事間接費   

 O工事  V工事  X工事  Y工事   (小計)

 Z工事

(合計)
  賃金給料   

 
 







  法定福利費

 
 







  福利厚生費

 
 







  消耗品費










  車両費










  減価償却費










    ……










  雑費










(小計)









   5,800

 

Ⅱ未成比による工事間接費の配布

完成工事:

 未完成工事


            全    完    成    工    事              

未完成

  全工事 


                                                5,147

    653

   5,800

                                                                                   (11.3 %) (100%)


 Ⅲ未成支出金の額の算出


  Z工事
  工事直接費
    400円

   +
工事間接費

  653円



未成工事支出金

1,053円

 

※こちらの例では、工事直接費を材料費と外注費の2つとして、これを元に算出した例としております。

各企業の実態に即した計算方法を適用してくださいませ。


「エクセル・フォーム」(例と解説)
未成工事支出金の算出方法の例.xlsm.zip
圧縮Zipフォーマット 16.9 KB

★当方は当頁の記載内容につき一切責任は負いません。★